8 各論3:体温(消化器系):肝胆膵(3)肝臓・代謝異常(2:高脂血症3)
話を中性脂肪に戻しましょう。
血液中の中性脂肪(TG)の分解を
促す薬がベザフィブラート。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00061074
脂質の分解酵素リパーゼの一種
(リポタンパクキナーゼ)を活性化します。
妊婦・妊娠可能性のある人と授乳中の人、
腎臓が悪い人には禁忌です。
妊婦・妊娠可能性のある人に対しては安全性未確立。
少なくとも動物実験では乳汁移行が報告されています。
腎臓のせいで禁忌になる例としては、
腎不全等の重篤腎疾患、腹膜透析を含む人工透析中、
血清クレアチニン値が2.0mg/㎗以上ですね。
ベザフィブラートは
主に腎臓の排泄作用に頼っているため、
腎臓の調子が極端に悪いと
副作用が出やすくなってしまいます。
重大な副作用は横紋筋融解症、
アナフィラキシーショック、肝臓障害、
皮膚粘膜症候群(スチーブンスジョンソン症候群)。
アナフィラキシーショックと肝臓障害(黄疸)は、
もうイメージできますね。
ちょっと寄り道になりますが、
横紋筋融解症と皮膚粘膜症候群も補足してしまいますよ。
横紋筋融解症は、
骨格筋(=横紋筋)が何らかの原因で分解されてしまうもの。
筋肉分解により血液中に出てきたミオグロビンが
腎臓糸球体に詰まると急性腎不全を引き起こします。
ミオグロビンは筋肉の中にいる、
ヘモグロビンのように酸素とくっつく(取っておく)ところ。
6 筋骨格系のおはなし(2)
筋肉が収縮…「動く」ためにはATPが必要。 前回のミオシンタンパクの首の動きのもと…でしたね。 AT ...
https://5948chiri.com/anat-6-2/
筋肉が分解されたせいで体(筋肉)が痛むのはもちろん、
尿が赤褐色(ミオグロビン尿)になり、
急性腎不全で乏尿、無尿等が起こります。
こうなってしまうと腎臓の悪い人は
さらに腎臓の働きが悪くなってしまうため、
大ピンチ。
だから「禁忌」なのですね。
腎臓の働きが悪くなるとどうなるかは、
腎臓の働きを思い出せばイメージできるはず。
「クレアチニン」というのは、
筋肉中のエネルギー保存型クレアチンが変化した、
「捨てるための形」です。
これが血液(血清)の中にたくさんあるということは…
腎臓でうまく「ろ過」ができていない証拠ですよ。
皮膚粘膜症候群は、皮膚と粘膜に症状が出る過敏症の一種。
原因は薬だけではありませんが、
薬に対してのアレルギー反応として出ることが多いですね。
目で起こると失明の危険。
重症化してしまうと、表皮が壊死してしまう
「中毒性表皮壊死症」になってしまうこともあります。
もし出現したら、即時に薬が中止になるはずですよ。
以上で脂質異常のおはなしは一段落。
次回は糖質代謝異常(糖尿病)のおはなしです。
【今回の内容が関係するところ】(以下20230203更新)