9 各論4:体温(内分泌系):副腎・性腺(3)
性ホルモンにがん細胞成長が依存するなら、
もっと根本的に対処する方法がありますね。
視床下部レベルで
コントロールしてしまえばいいのです。
今から「視床下部レベルで
性ホルモン依存がんに効く薬」を紹介しますが…。
注意してくださいね。
対象となる病気(効く病気)が多い薬ですが、
全身に広い影響が出る薬でもあります。
ある意味、視床下部の性ホルモンコントロール全体の復習に
もってこいのおはなしですよ。
リュープロレリン酢酸塩(リュープリン)は、
LH⁻RH誘導体と呼ばれるお薬です。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00065297
体内に吸収されて、代謝されると
「黄体刺激ホルモン放出ホルモン」の働きを発揮します。
だから、薬の初回仕様直後は
「下垂体⁻性腺刺激作用(急性作用)」が出ます。
欲しい効果と、逆向きの働きです。
でも、薬の刺激はあまりに強く下垂体の刺激ホルモン
(FSHやLH)は産生・放出が減ってきます。
「こんなに作れない…もう駄目だ…」状態です。
さらに性腺(卵巣や精巣)でも
下垂体からの刺激に反応しなくなっていきます。
急性作用のようなドカンと強力な命令に慣れてしまい、
ちょっとやそっとの刺激では動かない状態です。
結果、テストステロンやエストラジオールの産生は
思春期前のレベルまで下がります。
これで、性ホルモン依存のがんは増えられなくなりました。
前立腺がん、閉経前の乳がんはもちろん、
中枢性思春期早発症や子宮内膜症、
子宮筋腫の一部にもこのお薬は使われます。
ちょっと覚えておいてほしいこと。
「あまりに強い刺激に慣れて、
ちょっとやそっとの刺激で動かなくなる」おはなしは、
中枢のところでまた出てきますよ。
「依存」に関係してくるおはなしです。
話をリュープロレリン酢酸塩に戻しますよ。
禁忌や重大副作用等が、結構広いところに出てきます。
薬自体に過敏症が出たら当然禁忌。
女性では妊娠・妊娠可能性のある人、授乳中は禁忌です。
動物実験で胎児死亡や骨格異常、
乳汁移行が報告されています。
また、安全性が確立されていないので乳児にも禁忌。
あとは、診断がついていない異常性器出血も禁忌ですよ。
悪性疾患の可能性があるからですね。
慎重投与以降は、次回おはなしすることにしましょう。
【今回の内容が関係するところ】(以下20230404更新)