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9 各論4:体温(内分泌系):視床下部・下垂体(4)

2023年4月4日

下垂体後葉から出る

バソプレッシン(バソプレシン)は、

尿量調節担当ホルモン(抗利尿ホルモン)でした。

バソプレッシン不足(欠乏症)は尿崩症を起こして

脱水の危険がある…とおはなししましたね。

 

そんなときにはバソプレッシン補充薬の

デスモプレシン酢酸塩水和物(デスモプレシン)。

点鼻薬や、鼻の中にスプレーするお薬です。

https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00045707

 

バソプレッシンが「尿を出させない(抗利尿)」のは、

尿細管に原尿中の水分をたくさん再吸収させるせい。

水分を再び体の中に取り入れますから、

血圧を上げる働きもありますね。

一応、デスモプレシン酢酸塩水和物の血圧上昇作用は、

バソプレッシンによるものよりも穏やかです。

 

でも、慎重投与のところを見れば、

その血圧変動を無視することはできないようですね。

狭心症、高血圧を伴う循環器系疾患、

高度動脈硬化のある人は、

血圧上昇のせいで症状悪化の危険性があるため、

慎重投与の対象です。

他にもアレルギー性鼻炎や鼻疾患のある人は、

吸収が不安定になる可能性があるため慎重投与対象。

そして下垂体前葉不全の人も

水中毒を起こしやすくなるので慎重投与です。

 

水中毒というのは、

水の飲みすぎ等で起こる低ナトリウム血症のこと。

細胞が正しく電気を作るためには、

細胞内外のナトリウム、カリウム、

カルシウムの濃度差が大事でしたよね。

細胞が正しく電気を作れないと、筋肉は収縮できないし、

神経細胞も情報を伝えることができません。

そのせいで軽度疲労、頭痛・吐き気・イライラ…

これ、危険なサインです。

放っておくとけいれんや昏睡を起こし、

呼吸困難から死の危険です。

しかも併用注意にある抗うつ薬の一部

(イミプラミン塩酸塩)は

バソプレッシンを分泌させてしまうので、

必要以上に水分再吸収が進み、

結果として低ナトリウム血症になってしまう可能性があります。

 

下垂体前葉不全は、

後葉ホルモンのバソプレッシンと直接の関係はありません。

でも「下垂体全体の機能不全」の可能性があります。

仮に「前葉だけが悪い」のであっても、

副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)がうまく出ませんから、

副腎皮質から出るホルモンが不十分な状態。

糖質コルチコイドが出ないと、

各種ストレスに弱くなってしまいます。

細胞にとって血中ミネラル異常は立派なストレスです。

また鉱質コルチコイドが出ないと、

血液のミネラル調節がうまくできません。

だから下垂体前葉不全では水中毒が起こりやすいので、

慎重投与対象になるのですね。

 

この水中毒、

精神分野では「必ず出る」レベルの大問題です。

精神分野の薬は、

口渇(抗コリン作用)が出るものが多いからですね。

 

【今回の内容が関係するところ】(以下20230404更新)