10 各論5:体温(感染・免疫):②細菌に効く薬(2)
抗生物質改良後のおはなし。
殺菌系のもう1つアミノグリコシド系と静菌系の
「セントラルドグマを邪魔する薬」の誕生です。
アミノグリコシド系抗生物質は、
セントラルドグマ(とタンパク質)の復習にぴったりです。
セントラルドグマにはキーワードがありました。
DNAをもとにDNAをコピーする「複製」、
DNAをもとにRNAをコピーする「転写」、
mRNAの情報をもとに
アミノ酸をつなげてタンパク質を作る「翻訳」でしたね。
DNAに記録してあった遺伝情報通りにアミノ酸をつなげれば、
作りたいタンパク質の1次構造が完成。
あとは立体化していけば望む働きの
タンパク質(膜タンパク質や酵素など…)が作れるはずです。
アミノグリコシド系抗生物質は、
mRNAの情報とは違うアミノ酸をつなげてしまう働きがあります。
タンパク質の1次構造が変われば、
立体構造が変わり、働きも変わってしまいます。
これについては生化学の鎌状赤血球症で確認済みですね。
望む働きのタンパク質ができないと、
細胞は生きることも増えることも難しくなります。
その結果細菌が死んでしまうのが、
アミノグリコシド系抗生物質です。
アミノグリコシド系抗生物質として、
ゲンタマイシン(ゲンタシン)を紹介しますね。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00056372
細菌にはよく効きますが…選択毒性はありません。
ヒトの細胞にも効いてしまいます。
要注意地点は腎臓と第8脳神経領域。
ゲンタマイシンが代謝されてできたものは、腎臓にとって毒物。
尿細管の働きが邪魔されて、急性腎不全を起こす危険性があります。
第8脳神経(内耳神経)の担当は聴覚と平衡覚。
5 脳神経系と内分泌系のおはなし(5)
聴覚(聞く)のおはなしです。 普段見える耳は、「外耳」といって音を集める役目。 顔の外側に ...
https://5948chiri.com/anat-5-5/
どちらも耳の中にある細い毛(有毛細胞)が働いているところですが、
ゲンタマイシンはそこにも悪影響!
難聴や音階変化は薬中止後も残ってしまう危険があります。
禁忌にあるバシトラシンは、
抗生物質の一種(βラクタム系抗生物質)ですね。
「もう少し細菌への効きは弱くてもいいから
ヒトへの悪影響を少なくできないかな…?」
これが、静菌系の抗生物質のスタートになりますね。
静菌系抗生物質も、やっぱりたくさんの種類があります。
簡単なグループ分けとその名前、
どこに働くものかをまとめておきますね。
「テトラサイクリン系」は、
mRNAにアミノ酸を合わせていくところ
(正しいものを持ってきたかチェックするところ)を
邪魔する薬。
「マクロライド系」は、
タンパク質合成担当の細胞小器官リボソームが
mRNA上を動いていくところを邪魔する薬。
「クロラムフェニコール系」と「リンコマイシン系」は、
アミノ酸がつながって(ペプチド結合)
タンパク質になろうとするところを邪魔する薬です。
出会う機会が多いのは、
テトラサイクリン系とマクロライド系ですね。
【今回の内容が関係するところ】(以下20230503更新)