7 各論2:脈・血圧(血管):高血圧・低血圧(3)輸液(1)
低血圧のときだけではありませんが…。
補液(点滴)は間接的昇圧の意味があります。
もちろん、直接的に輸血をするときもありますよ。
とにかく急ぐ手術中の輸血(全血製剤)が代表。
他にも血液の特定の部分だけを入れる成分製剤。
例としては赤血球濃厚液、濃厚血小板液、
液状血漿がありますね。
もっと特定部分だけを集めて入れる
血漿分画製剤もありますよ。
ヒト免疫グロブリン製剤、血液凝固因子製剤、
アンチトロンビン製剤(抗トロンビン薬)、
血清アルブミンなどがありますね。
生化学の勉強をしてきましたから、
何を補充しているかは分かりますよね。
全血製剤以外は、血液の特定の働きが足りないときに
追加的に補充してあげるためのものです。
一般的な輸液(点滴)の目的は
水分と電解質(ミネラル)の補給。
一緒に栄養分(主に糖質)を補給できることもありますが、
それはおまけ。
本格的に栄養補給が必要なら、
消化管に入れる経管栄養か、
血管でも太い血管(鎖骨下静脈)に入れる
中心静脈栄養(TPN・IVH)になるはずです。
ここについては、
「体温」の消化管系でおはなししますからね。
話を水・電解質補給の輸液(点滴)に戻します。
「とにかく体の水分が足りない!」というときには、
生理食塩水です。
化学や生物の授業で
「0.9%の食塩水はヒトの等張液」と勉強しましたよね。
まさにそれが生理食塩水です。
ちょっとだけ復習。
人体が水不足で困っているときに、
海水のような濃い食塩水を補給したら、
細胞が脱水されてしなびてしまいます。
これは浸透圧のせいで、
細胞内水分がもっと濃いところ(ここでは血管内)を
薄めに行ってしまったから。
じゃあただの水を補給すればいいかというと、
今度は細胞が水ではちきれてしまいます。
赤血球が形を保てずに破裂する(溶血)原因の1つです。
ただの水が入ってくると
細胞内が「もっと濃い」場所になってしまい、
薄めるための水が入り込みすぎた結果ですね。
0.9%食塩水なら、
ヒト細胞に水が入り込みすぎることはありません。
水不足の人体を、
ちょうど良くうるおすことができます。
これが「等張液(等しい張力の液体)」で、
ヒト細胞の「生理食塩水」です。
だけど、これだけでは
水とナトリウムイオンと塩化物イオンしか補給できません。
だからここにカリウムイオンと
カルシウムイオンを加えたものが「リンゲル液」です。
乳酸リンゲル液というのは、
塩化物イオン(Cl⁻)や重炭酸イオン(HCO₃⁻)といった
マイナスイオンを血漿に近づけるために
リンゲル液をもとに乳酸ナトリウムを加えたもの。
他にも酢酸ナトリウムや
炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)を
加えたものもありますよ。
以上が、等張液の輸液(点滴)です。
【今回の内容が関係するところ】(以下20221226更新)