10 各論5:体温(感染・免疫):②細菌に効く薬(5)
細菌のちょっと特殊組のおはなし。
ピロリ菌、結核菌、芽胞菌に効く薬のおはなしです。
まず、消化器系の胃潰瘍のところで出てきたピロリ菌。
いかんせんいる場所が特殊なので、
対応も特殊になります。
胃酸コントロール薬と抗生物質2種類を合わせた、
「3つの薬」を同時に使うのが基本です。
ボノサップパックと呼ばれています。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00066207
含まれているのは
ボノプテザンフマル酸塩(ボノサップ)と、
クラリスロマイシン(クラリス)、
アモキシシリン水和物(アモリン)ですね。
ボノプテザンフマル酸塩は
プロトンポンプ(H⁺-K⁺-ATPアーゼ)を邪魔する薬。
プロトンポンプと胃酸の関係は、
胃潰瘍のところでしましたよ。
アタザナビル硫酸塩、
リルピビリン塩酸塩との併用は禁忌です。
これらは抗ウイルス薬。
胃酸のpH変化で溶解・吸収が悪化して、
効きが悪くなってしまうからですね。
クラリスロマイシンについては
マクロライド系抗生物質のところで前回おはなししました。
禁忌や併用注意はそちらを復習。
アモキシシリン水和物は、
合成ペニシリン系の抗生物質です。
耐性の心配をしなくていいなら、
ヒト細胞に悪さをしない殺菌系(βラクタム系)でした。
アモキシシリン水和物固有の禁忌は伝染性単核球症。
伝染性単核球症に使ってしまうと、
アレルギー反応から発疹が出てしまいやすいからです。
アモキシシリン水和物の併用注意も確認しましょう。
ワーファリン、プロベネシド、経口避妊薬ですね。
ビタミンKを作ってくれる細菌がダメージを受けるので、
ビタミンKと拮抗関係にある
ワーファリンの効果が強く出るようになります。
尿酸を排泄促進させる一方で、
腎臓からの他の薬排泄を邪魔する薬がプロベネシド。
併用するとアモキシシリン水和物の効果が強く出ますね。
そしてアモキシシリン水和物は
腸内細菌叢に影響を与えることで、
腸肝循環再吸収を抑制して経口避妊薬の効果が弱まります。
性ホルモンは脂溶性ホルモンのステロイドホルモン。
脂質の吸収は胆汁酸が出てぐるぐるリサイクルする
腸肝循環が必要と分かれば、
なんとなくイメージできそうですね。
次回は、結核菌に効くお薬です。
【今回の内容が関係するところ】(以下20230503更新)